Gum disease

歯周病治療


歯周病は、細菌(歯周病菌)が口内で増殖することによって起こる感染症であり、虫歯と並び、口内に起きる二大疾患の一つです。歯周病には、歯肉のみに炎症が起きる「歯肉炎」と、進行して炎症があごの骨などに及ぶ「歯周炎(歯槽膿漏)」があります

歯周病は、虫歯のような痛みがないため、初期は発症に気付かないことも多いですが、進行するにつれ、歯肉の腫れや出血といった症状が現れ、重症になると歯がグラグラになって抜け落ちてしまうこともあり、現在、虫歯を抜いて日本人の歯の喪失原因の第一位になっています。*1
*1 公益財団法人8020推進財団 第2回永久歯の抜歯原因調査報告書

歯周病は、急に悪化するのではなく、徐々に進行していく病気のため、早期に発見し、適切な治療を行うことで症状の進行を抑えることが肝心です。検診で歯周病を指摘された方や、歯茎の出血などの症状がある方は、大切な歯を失わないためにもぜひ当院にお早めにご相談ください。

1.歯周病の治療とは?

私達の歯は、歯茎(歯肉)の上に見えている「歯冠(しかん)」と、歯茎の下にあり、歯槽骨に埋まっている「歯根(しこん)」の二つの部分で構成されています。
通常、歯と歯茎は、歯の根の周りを覆う薄い膜(歯根膜)でしっかりとくっつき、細菌が入り込まないようになっていますが、毎日の歯磨きが不十分で、歯の表面に食べかすや汚れが残っていると、歯と歯茎の間の溝に細菌の塊である「プラーク(歯垢、バイオフィルム)」が付着します。
プラークは、白く、ネバネバした物質で、重量1㎎中に約300種類、1億個もの細菌がいると言われており、これらの細菌が作り出した毒素が歯肉に炎症を起こすことで、歯茎に腫れや出血を引き起こします。

また、時間が経って固まったプラークは、軽石のような「歯石」となってこびりつき、徐々に蓄積されていくことで、歯と歯茎の間には「歯周ポケット」と呼ばれる隙間が作られます。
放置していると歯周ポケットは次第に深くなり、その内部ではさらに細菌が増殖して、歯の土台である歯槽骨(しそうこつ:あごの骨)を溶かし始めます。感染が広がるにつれ、歯槽骨は少しずつ失われ、歯を支えることができなくなると、歯がぐらついたり、歯肉が下がったりして、最終的には自然に抜け落ち、歯を失うことになります。

歯周病は進行させてしまうと完治が難しくなりますが、早期に発見し、クリーニングなどの「プラークコントロール」を行うことで、進行を抑え、症状を改善することが可能です。
ただし、治療で症状が改善した場合でも、再び口内環境が悪化すると歯周病はすぐに再発してしまうため、治療を終えた後も定期的なメインテナンスで、口内環境を維持することが大切です。

図:歯の構造と歯周病

歯周病のセルフチェック

歯周病は初期のうちは、ほとんど自覚症状がありません。
以下のような症状に当てはまる場合は、歯周病が進んでいる可能性もありますので、できるだけ早期に受診することをおすすめします。

  • 歯茎から血が出る
  • 歯茎を押すと白い膿が出る
  • 歯茎が腫れて赤く、ブヨブヨしている
  • 歯の表面がザラザラする
  • 歯がグラグラ揺れる
  • 歯が浮いた感じがする
  • 歯茎がむずむずして痒い
  • 起床時、口の中がねばねばしている
  • 口臭が気になる
  • 歯が長くなった(伸びた)感じがする
  • 最近、歯と歯の隙間が広がってきた

2.歯周病の進行段階と症状

歯周病には、歯肉だけに炎症が起きている「歯肉炎」と歯槽骨にまで炎症が及んでいる「歯周炎(歯槽膿漏)」の2種類があり、歯周炎はさらに3つの段階に分けられます。

歯肉炎

炎症が歯肉(歯茎)に留まっている状態です。歯茎に腫れや赤みが出て、硬いものを食べた時や歯磨き時などに出血することがあります。

軽度歯周炎

歯周ポケットの深さが3~4mm程度になり、歯茎が腫れぼったくなって、歯磨きをした時に歯茎から出血が起こることもあります。ただし、この段階ではまだ自覚症状がない場合もあります。

中等度歯周炎

歯周ポケットの深さが5~7㎜程度になり、歯磨き時の出血のほか、歯肉の腫れ、歯のぐらつき、口臭などの症状が現れるようになります。

重度歯周炎

歯周ポケットの深さが7㎜以上になり、炎症が歯槽骨の深いところまで広がった状態です。
歯磨き時には毎回出血するようになり、歯がぐらついて硬いものが噛みにくくなります。また、歯肉が下がって歯と歯の隙間が広がることで、食べ物が詰まりやすくなったり、歯が長く見えるようになったりして、最終的には自然に歯が抜け落ちます。

図:歯周病の進行段階

3.歯周病のおもな検査

歯周病は早期発見が肝心ですが、初期は自覚症状がないため、定期的に歯科検診を受けることが大切です。歯周病の診断には、おもに以下のような検査を行います。

プロービング検査

「プローブ」という針状の金属製の器具で、歯周ポケットの深さ(歯肉の入り口から底の部分までの距離)を調べる検査で、歯周病の重症度の判定に用いられます。
歯周ポケットの深さが1~2㎜程度であれば問題ありませんが、歯周ポケットの深さが3㎜を超えるような場合には歯周炎と診断します。重症になると10㎜を超えるような場合もあります。

X線写真検査

口内のX線写真撮影を行い、歯肉の下にある歯槽骨の状態を調べる検査です。
歯槽骨が溶けて失われた量(骨吸収)が正確に分かるのがメリットです。健康な状態の骨吸収は0~5%程度ですが、中等度歯周炎の骨吸収は30%程度、重症歯周炎になると骨吸収は80~100%にも上ります。

PCR検査

口内の清掃状態を確認するために行う検査で、専用の染色液で歯を染め出してプラークの付着具合を調べます。1本の歯を4面に分け、その歯頚部(歯と歯肉の境目)の染まり具合を確認してプラークの付着率(プラークコントロールレコード)を記録します。
染まった歯の歯面数を全歯面数で割り、100をかけたものがプラークコントロールレコードで、20%以下を目標とします。

※上記以外にも必要に応じて、歯茎からの出血を調べる検査や、歯の揺れ具合を調べる検査、
歯周病原菌を特定する細菌検査などを行う場合もあります。

4.歯周病治療の種類

歯周病の治療には、大きく分けて「歯周基本治療」と「歯周外科治療」の二種類があります。

歯周基本治療

重症度に関わらず、全ての歯周病患者さんに必要な治療です。
患者さまご自身が行う「セルフケア(毎日の歯磨き)」と、歯科医院で行う「プロフェッショナルケア(クリーニング)」を併行して行うことで、口内環境を改善させることが目的です。口内の状況によっては、修復物の作り直しやかみ合わせの調整、抜歯などが必要になる場合もあります。

  • 正しい歯磨きの徹底
    医師や歯科衛生士から正しい歯の磨き方の指導を受け、毎日ご自宅で行っていただきます。
    正しい歯磨きができるようになると、徐々に炎症が治まり、歯茎が引き締まってくるので、歯科で行う歯石除去なども行いやすくなります。
  • 歯石除去
    歯科衛生士が行う、専門的な口腔内のクリーニングです。
    「スケーリング」は、超音波で歯石や着色(ステイン)を破壊して洗い流す治療で、初期の歯周病であればスケーリングと歯磨きの徹底だけで完治させることも可能です。
    「ルートプレーニング」は、歯根表面についた汚れや軟化したセメント質・象牙質などを取り除き、滑らかにする治療です。歯の表面がつるつるになることで、汚れを付きにくくする効果があります。スケーリングとルートプレーニングはセットで行われることが多く、二つを合わせて「SRP(エスアールピー)」と呼びます。
  • 修復物のやり直しやかみ合わせの調整、抜歯(※必要な場合)
    修復物(詰め物や被せ物)の適合が悪いと、歯垢が付きやすく、炎症がなかなか治まらない場合があります。再発のリスクも高くなるため、必要に応じて、古い修復物を取り外し、精度の高い修復物に作り直す治療を行います。
    また、かみ合わせがずれて、変な方向に力がかかっていると、歯槽骨が吸収されやすくなるため、かみ合わせの調整も行います。
    その他、すでに症状が進行し、歯がグラグラして周りの歯に悪影響を及ぼす可能性がある場合は抜歯が必要になる場合もあります。

歯周外科治療

歯周病が進行し、基本治療を繰り返し行っても症状の改善が見られない時には、外科的な治療を検討します。

  • フラップ手術(歯肉剥離掻爬手術)
    通常のスケーリングやルートプレーニングでは取り切れない歯周ポケットの深い部分に入り込んだプラークや歯石を除去する治療です。局部麻酔を行ってから歯茎を切開し、歯根が露出した状態でプラークや歯石を徹底的に取り除いた後、歯肉を縫合して元に戻します。
    フラップ手術は、基本治療を繰り返し行っても歯周ポケットが5㎜以上残り、歯石が付着している場合などに行います。
  • 歯周組織再生療法
    歯周病によって破壊されてしまった歯茎や歯槽骨などの歯周組織を再生させる治療です。
    歯周組織再生療法にはいくつかの方法がありますが、当院では、歯周組織の再生効果がある「リグロス🄬」という薬剤を用いた治療を行っています。
    リグロス🄬の主成分である「bFGF」というタンパク質は、骨や筋肉などの細胞の増殖や分化を促進して再生させる効果があります。フラップ手術で歯茎を切開し、プラークや歯石を除去した後、歯槽骨の欠損部にリグロス🄬を塗布すると、歯周組織が再生し、歯を抜かずに残せる可能性が高くなります。また、グラグラしていた歯の揺れが治まるため、歯周病の進行自体を抑える効果も期待できます。「リグロス🄬」は、保険診療で行うことができますが、歯周病の基本治療を済ませた方が対象となります。
  • 歯周形成手術
    歯周病が原因で支障をきたした歯肉の「形態(見た目)」を改善する治療です。歯肉が下がって歯が長く見えるのを改善する「根面被覆術」などがあります。
    根面被覆術は、局部麻酔をした後、口蓋(こうがい:口の中の上側の壁)から歯肉を切断し、歯肉が下がった部位に移植する手術で、1時間程度で終了します。

治療後のメインテナンスについて

歯周病は、再発が多い病気であり、治療によって症状が改善された場合でも、日常のケアを怠るとすぐに再発してしまいます。
再発予防には、口内環境を安定して良い状態に維持することが必要不可欠なため、治療が終わった後も、定期的にメインテナンスを続けていただくことが重要です。
メインテナンスでは、2~4か月ごとに歯周病の検査を受けていただき、歯の清掃状態のチェック、歯周病の再発や悪化の有無などの確認を行うとともに、口内のクリーニングや歯石の除去などの処置でプラークコントロールを行います。

5.当院の歯周病治療の特色

当院の歯周病の治療には以下のような特色があります。

マイクロスコープによる精密な診療

当院では、保険診療・自由診療に関わらず、マイクロスコープを導入しています。
口内の状態を3~30倍に拡大し、ライトで明るく照らし出すことで、裸眼では見ることができなかった歯周ポケットの奥深くに潜むプラークや歯石なども取り残すことなく除去することが可能です。
また、フラップ手術や再生療法などの外科治療もマイクロスコープを使用して行うことで、より精度の高い治療が可能になります。

治療時の痛みを軽減

当院では、歯石除去に使用する超音波スケーラーに「キャビトロン」という機種を導入しています。キャビトロンは、治療時の痛みを抑えられるのが特徴で、通常のスケーリングだと歯がしみたり、痛みが出たりする知覚過敏の方でも快適に治療を受けていただけるのが大きなメリットです。
また、キャビトロンは感染対策にも優れているため、治療による感染のリスクを抑え、安心して治療を受けていただくことが可能です。

画像やデータを用いた説明で、治療の効果が実感できる

当院では、毎回、マイクロスコープの拡大画像や歯周病の検査データをご覧いただきながら、丁寧な説明を行います。術前術後の画像や検査の数値などを実際に比較することで、治療の内容や治療前後の違いも明確に分かるようになり、「効果を実感できる」と、多くの患者さまからご好評をいただいています。

6.Q&A

1)虫歯と歯周病の違いは何ですか?

虫歯も歯周病も細菌感染が原因で起こる歯の疾患ですが、虫歯は細菌の作り出す酸によって歯が溶かされて穴が開くのに対し、歯周病では歯の周辺の歯茎や歯槽骨に炎症が起きる点が大きな違いです。ちなみに、歯周病菌は、単一の細菌を指すものではなく、数十種類の細菌が関係していると考えられています。

2)マイクロスコープを使用すると費用が高くなりませんか?

当院では、保険診療と自由診療の区別なく、ほとんどの治療にマイクロスコープを使用します。
修復物のやり直しなどで自由診療の素材などを選択いただいた場合には自由診療となりますが、治療時のマイクロスコープの使用により、特別な費用がかかることはありませんのでご安心ください。

3)治療中はどれくらいの通院が必要ですか?いつ頃から効果が現れますか?

歯周病の基本治療では、通常、1週間に1回程度の通院が必要です。
治療の経過は重症度によっても異なりますが、治療開始後、1か月程度で効果が少しずつ現れ、3か月~半年後には、患者さんの多くが改善しています。

7.院長からひと言

当院は、歯周病治療の実績が豊富であり、大学病院で長年経験を積み、歯周病治療を得意とする歯科衛生士も在籍しております。
常に分かりやすい説明を心掛け、患者さまご自身に歯周病を深くご理解いただくことが大切だと考えており、「良くなってきたことを実感していただける治療」にこだわり、質の高い治療を提供しております。
マイクロスコープを取り入れた精密な診断・処置はもちろん、必要な場合には、治療の必要性をしっかりご説明し、患者さまにご納得いただいた上で、再生療法をはじめとする外科治療も積極的に行っております。
お口の中を良い状態に保ち、大切な歯を守るためにも、歯周病でお困りの患者は、ぜひ当院にご相談ください。